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カテゴリ:法律・社会科学・心理・教育(69/70)

調査報告・提言書「未来ひょうご すべての子どもたちが輝くために −高校への外国人等の特別入学枠設置を求めて−」 : 外国人の子どもの未来を拓く教育プロジェクト | BookWay書店





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タイトル: 調査報告・提言書「未来ひょうご すべての子どもたちが輝くために −高校への外国人等の特別入学枠設置を求めて−」

著者: 外国人の子どもの未来を拓く教育プロジェクト  書店: BookWay書店 

カテゴリー: 法律・社会科学・心理・教育
ページ数: 106
サイズ: A4

特記:

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本の要約

発行にあたって

2014年1月、兵庫県内の大学教員が中心となって外国人にルーツをもつ「ニューカマー」の子どもたちの進路、特に高校進学等の実態・課題調査等の研究を行う今プロジェクト(「兵庫の外国人の子どもの未来を拓く教育プロジェクト」)が発足した。
兵庫県内で活動するボランティアの地域学習支援者は「ニューカマー」生徒に全日制高校進学者が少ないこと、他府県で実施されているような「特別入学枠」制度がないことに疑問を持ち、子どもたちが夢のある進路選択をできるように現行制度の改善を願っていた。この現状を知った「ニューカマー」の子どもに進路について関心を持っていた研究者が呼びかけで集まり、今研究チームを結成した。

1980年代以降、日本は外国人急増の時代となった。外国人が居住する地域が増え、自治体では「日本国籍者に限る」という制限を撤廃し、福祉や住民サービスの改善、日本語学習支援などを始めた。兵庫県では1995年以降「外国人県民」の位置づけを始めた。学校にも日本語を母語としない子どもが多く在籍するようになり、兵庫県でも日本語学習支援をする「サポーター」等を学校に派遣するようになった。
しかし、日本語を母語としない子どもにとっては、日本の学校での勉強は難しく、高校入試は壁となり、進学率の低さが指摘されてきた。日本語理解が不十分な生徒への「公平措置」としての「特別入学枠の導入」は海外帰国生徒に続いて、中国帰国者の子どもに適用された(1980年代後半より東京都から始まり、各地に広がる)。この制度は、今日では16以上の都府県で実施され、日系人や国際結婚等の「ニューカマー」生徒にも適用されている。兵庫県でも1990年代初めに地域学習支援団体や中学校は「特別入学枠」を要望していた。2002年には「外国人の子どもに関する教育将来構想検討委員会」が調査研究を行い、「入試特別措置(特別入学枠)」設置等を提言している。また、この間、兵庫県議会でも議員の質問・要望が行われ、教職員組合や市民団体等も「特別入学枠」導入を要望している。しかし、兵庫県では2000年の「ルビ付き等」からの進展はない。

当プロジェクトは1月より毎月定例会をもち、関心を持つ分野の調査報告や、外部講師を招いた学習会のほか、県内3地域で中間発表と意見交流の場として「中間報告会」を実施した。また、兵庫県自治学会研究発表会や、兵庫県議会の超党派議員有志学習会、兵庫県在日外国人教育研究集会で報告の機会をいただいた。ほか、兵庫県知事公室長や県教育次長にもプロジェクト趣旨説明を行う機会も持てた。
約一年にわたるこのような活動をまとめたものが本報告書である。冒頭には改善すべき高校入試制度内容を「提言」としてまとめた。

最後に、データ提供等の協力をいただいた関係府県教育委員会、兵庫県・県教育委員会、神戸市・姫路市教育委員会、外国人集住都市会議、奈良県外国人教育研究会、NPOおおさかこども多文化センター、地域学習支援団体等に感謝申し上げる。
なお、この研究は公益財団法人 日本教育公務員弘済会の研究助成事業として実施した。

2015年1月  プロジェクト呼びかけ人代表  辻本 久夫

著者のプロフィール

執筆者プロフィール(あいうえお順です)

井口 泰(いぐち やすし)
関西学院大学経済学部教授。移民政策学会会長(2013年から)、外国人集住都市会議アドバイザー(2003年から)、関西学院大学少子経済研究センター長(2004〜13)、規制改革会議専門委員(海外人材担当)(2005〜10)、マックス・プランク研究所客員研究員(2001〜2)、リール第一大学客員教授(2000)、主要著書に『世代間利害の経済学』(八千代出版2011)、『外国人労働者新時代』(ちくま新書2001)、『国際的な人の移動と労働市場』(日本労働研究機構1997)ほか。

乾 美紀 (いぬい みき)
兵庫県立大学環境人間学部准教授。米国での教員時代にラオスからの難民の子どもに出会ってからマイノリティの教育に関心を持つ。現在は、神戸市や姫路市を中心に外国人の子どもの教育支援に関わっている。近年の実践や研究成果は、松尾知明編著(2013)『多文化教育をデザインする-移民時代のモデル構築』勁草書房、黒沢満編著(2014)『国際共生とは何か―平和で公正な世界へ』東信堂、などに掲載している。

大岡 栄美(おおおか えみ)
関西学院大学社会学部准教授。専門はカナダにおける移民政策・多文化共生。現在は神戸市、丹波市、三田市など兵庫県下各地域での多文化共生意識の醸成や外国にルーツを持つ子どもの教育支援(オープンキャンパス・夏休み科学実験教室)を実践。こうべ子どもにこにこ会運営委員。著書、「カナダにおける移民政策の再構築─「選ばれる移住先」を目指すコスト削減とリスク管理」『移民政策研究第4号』(2012)等。

落合 知子(おちあい ともこ)
神戸大学大学院国際協力研究科研究員、神戸親和女子大学、関西国際大学、京都産業大学等にて非常勤講師。「外国にルーツを持つ子どもの表現活動」、「母語・継承語学習」について研究。著書『外国人市民のもたらす異文化間リテラシー-NPOと学校、子どもたちの育ちゆく現場から-』(2012年)

北山 夏季(きたやま なつき)
甲南女子大学文学部、大阪府立大学工学部非常勤講師。ベトナム語学、社会言語学。日本に住むベトナム系の子どもたちを対象とした母語教室について研究と実践を行っている。『Tieng Viet vui(楽しいベトナム語)』共著(2007)、「公立学校におけるベトナム語母語教室の意義について-保護者の取り込みと児童への影響-」『人間環境学研究第10巻1号』(2012)、等の著書がある。

小柴 裕子(こしば ゆうこ)
京都西山短期大学、東京福祉大学非常勤講師。中国の東華大学、常熟理工大学等で外国人専任講師として日本語教育に携わる。中国国内日本語教科書「桜にほんご」シリーズ1〜8(2007年)共著。「日语教学研究论丛」(2009年)共著など。

辻本 久夫(つじもと ひさお)
兵庫県立高校教員を経て関西学院大学非常勤講師。同大学人権教育研究室研究員、ひょうご部落解放・人権研究所研究員。「外国人教育」を研究。元兵庫県在日外国人教育研究協議会事務局長。地域活動「ふれあい芦屋マダン」「こくさいひろば芦屋(日本語教室)」に参加。著書『親と子がみた在日韓国朝鮮人白書』(1994年共著)、『21世紀兵庫の学校デザイン』(2002年共著)など。

野崎 志帆 (のざき しほ)
甲南女子大学文学部多文化コミュニケーション学科准教授。専門は人権教育、多文化教育、イギリスの市民性教育。世界人権問題研究センター(京都)嘱託研究員。特定非営利活動法人・神戸定住外国人支援センター理事。定住外国人子ども奨学金実行委員長。松尾知明編著(2013)『多文化教育をデザインする〜移民時代のモデル構築』勁草書房「第3章『学力保障』と『多様性』〜新労働党政権下のイギリスの学校における多文化教育」など。

野津 隆志(のつ たかし)
兵庫県立大学経済学部教授。著書『アメリカの教育支援ネットワーク』(2007年)、『タイにおける外国人児童の教育と人権』(2014年)など。

山中 浩路(やまなか ひろみち)
2014年度兵庫県教職員組合執行委員 教育文化部長

ロニー・アレキサンダー
神戸大学大学院国際協力研究科教授。ポーポキ・ピース・プロジェクト代表。専門: 国際関係論、平和学。
平和研究・教育・活動のテーマ:どのようにすればすべての生き物が安全で安心して暮らせるか。
キーワード:ジェンダー、非暴力、太平洋島嶼国。
業績は多数の学術論文以外にも、絵本『ポーポキ、平和って、なに色?』(エピック 2007 年)、ほか。

オブザーバー
金山 成美(かなやま なみ)
神戸新聞記者

協力者
金川 香雪(かながわ かゆき)
1995年4月に日本語指導担当教員としてベトナム人児童に関わってから、外国人の子どもの日本語指導担当として市内のベトナム人児童多数在籍校に勤務。現在は姫路市立東小学校教員。姫路市人権啓発センター運営推進委員。「ベトナム・カンボジアの子どもたちと共に」(『解放教育』2001年1月号寄稿)、「ベトナム人の子どもたちの現状」(『多文化・多民族共生教育の原点』明石書店2008年共著)。また各種教育関係研究会でベトナム人の子どもの教育課題について報告。

志岐 良子(しき よしこ)
2005年より、NPO法人 神戸定住外国人支援センター(KFC)の外国にルーツを持つ子どもの学習支援コーディネートを担当。KFCは日本語プロジェクト、中国残留邦人帰国者支援、定住外国人子ども奨学金事務局、調査研究事業、民族性に配慮した介護事業などを実施。「外国にルーツを持つ子どもの『学びの保障』がもたらすもの―神戸市におけるKFCの進学支援の実践から―」(共著、『ボランティア学研究』第14号2014年)