電子ブック|詳細画面
カテゴリ:自然科学一般(30/31)

細胞膜の界面化学 : 清沢桂太郎 | 学術研究出版





電子ブック|詳細画面

タイトル: 細胞膜の界面化学

著者: 清沢桂太郎  書店: 学術研究出版 

カテゴリー: 自然科学一般
ページ数: 332
サイズ: A5

特記:

電子書籍(1,320円)は BookWay コンテン堂店 でお買い求めください。

書籍形式








 


本の要約

細胞の90%前後は水で、K⁺、Na⁺、Cl⁻などのイオンをかなりの濃度で含んでいる。ですから、細胞は厚さ約10ナノメートルの細胞膜で囲まれた、これらの一種のイオン溶液と見なすことができる。動物細胞でも、植物細胞でも、多くは高濃度のK⁺と低濃度のNa⁺を含み、動物細胞の外液になる体液や海水は、低濃度のK⁺と高濃度のNa⁺から成る。植物細胞では、外液になる池や河川の水は、低濃度のK⁺やNa⁺などから成る。このような状態の中で、神経では細胞膜を挟んで発生している電位が、一過性に変化する興奮という現象が起こる。ある種の植物細胞でも同じような現象が見られる。植物細胞では、細胞膜を挟んでイオンの大きな濃度差があり、細胞膜の外側には機械的に強靭な細胞壁があるために、大きな浸透圧と膨圧が発生している。本書では、細胞膜を舞台にして起こるこのような現象について、物理化学と物理学の法則と言葉を基礎に論じられている。

著者のプロフィール

私は大阪大学理学部生物学科で生物学を学び、大阪大学大学院理学研究科生理コースで、細胞膜の水透過性に関する研究で理学博士号を頂きました。生物学と言ってもいろいろな分野がありますが、当時の大阪大学理学部生物学科の教育方針は、生物現象を化学や物理学の理論や言葉を使って説明するということでした。私はこの生物学科の学生として、教養2年生の時には、細胞生物学のほかに化学熱力学と有機化学と物理学の講義を受けました。実習としては、生物学実習のほかに化学実習、物理学実習があって、希望すれば地学実習が受講できました。学部3年生の時は、生物物理化学や代謝生理化学や放射線生物学や反応速度論やサイトクロームに関する講義などのほかは、ほとんどの講義は化学科の同級生と一緒で、物理化学、コロイド化学、高分子化学、教養課程からの有機化学や量子力学などの講義がありました。学部3年の生物学実習は生物学教室の各研究室の研究テーマの紹介が中心でしたが、夏休み前までは物理化学実習があってベンゼンの再結晶による精製とベンゼン溶液の凝固点降下や、水溶液の密度の測定や、pH-緩衝溶液の測定や、電池の起電力の測定などの物理化学に関する実習でした。私はもともと化学が得意でしたが、このような教育を通して、私は次第に生物現象を物理化学的に研究する道を歩むようになっていったのです。具体的には、私が学部4年生の卒業研究から大学院の時まで所属した研究室の、教授や助教授や助手の方々や大学院の先輩の方々の影響が強くありますが、いつの間にか自然と浸透圧や電気生理学的な研究に興味を持って行ったのです。特にその中で、大学院修士課程2年生の時には、生物物理若手夏の学校の当番校の一つとして、Hodgkin and Huxley (1952)の論文を輪読したことはその後の私の研究者としての歩みに大きな影響を与えたことでした。Hodgkin and Huxley (1952)の論文は難解で、大学院修士2年生の私の英語の読解力ではよくは理解できませんでしたが、夏の学校の校長を務められた高木雅行さんと副校長の大川和秋君が、Hodgkin and Huxley (1952)を含めた論文集を編集・出版してくれたので、現在でも必要な時に見ることができることは非常に有難いことです。

著者からの書籍PR

(1)現在でも、神経興奮に関しては、1952年にホジキンとハックスレーによって発表された学説が信じられている。しかし、1961年以降、神経内部を組成が既知の色々なイオン溶液で潅流する技術が開発されて、ホジキン・ハックスレー(1952)の学説とは異なる結果が発見されてきた。本書では、この問題について、類書よりも詳細に論じている。

(2)水溶液の浸透圧は、凝固点降下から求まることが分っている。しかし、ほとんどの類書はそのプロセスについて明記していない。本書では、そのプロセスを詳細に論じている。

(3)水に水を加えても、凝固点は変化しない。水とは異なる化合物を溶かして初めて、凝固点は降下する。それでは、水に水の同位体である重水を混合したら、凝固点はどうなるのであろうか。本書では、安定同位体の混合溶液の凝固点について、報告している。

著者のブログ

  •