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カテゴリ:歴史・哲学・地理・宗教(49/65)
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タイトル: 共同体エンジニアリング 19世紀ケンブリッジ州ウィリンガム教区の経済と社会
著者: 伊藤 栄晃 書店:
学術研究出版
カテゴリー: 歴史・哲学・地理・宗教
ページ数: 656
サイズ: A5
書籍形式
出版本
3,850円
本の要約
19世紀ヨーロッパで生まれた社会経済史学の歩みにおいて、前近代的な農業社会が都市的な近代商工業社会へどのような過程を経て移り変わっていったのかを解明することが、常にその中心課題であった。この課題にあって中世的な農村共同体の解体を示すものとして、「共同耕地制」農業の消滅が注目された。しかし1960年代以降イギリスの指導的農業史研究者ジョーン・サースクは、「共同耕地制」が中世以来の伝統農業ではなくそれが満面開花したのは18世紀の「産業革命」直前期であるとし、大きな論争となった。この論争は、社会経済史学における近代化図式の吟味という問題のみならず、「議会囲い込み」をもって農業近代化を説明する農業史叙述方法への疑間、そして従来一義的に「中世的」とされた「共同耕地制」の史料の多くが実際には18・19世紀のものであったという史料批判の問題に至るまで多岐にわたり、その後のこの学問の展開に多くの教訓・影響を与えた。
高橋基泰愛媛大学教授の先行研究を踏まえた上で、諸史料の読解・分析を通し本研究では以下のことを解明・推論できた。古典学説の説明とは裏腹に、18世紀以降この村が少数の有力農民の指導の下で「共同耕地制」農業体制をますます精緻なものに作り上げていた。その理由は奢修的酪製品「コテナム・チーズ」生産に要する休閑中の共同耕地内での共同放牧慣行を維持強化し、それが生み出す雇用と大きな収益をもって村が抱える大きな過剰人口に生計の道を与えるにある。このような「沼沢縁辺地域」における共同耕地体制と商業化した農業との組み合わせを「沼沢&酪農」経済と呼ぶ。また19世紀半ば過ぎの当教区で「議会囲い込み」が実施されたが、それは1810年代以降の英農業の不況と酪製品生産の企業化により、近世的な「沼沢&酪農」経済が維持できなくなり、それを解散・清算するイベントであったと位置付けた。
著者のプロフィール
1958年秋田県生まれ。
埼玉学園大学人間学部人間文化学科教授。専門:西洋史、西洋経済史。
主な業績:『近代英国社会史序説――歴史叙述における19世紀と20世紀――』(関東学園大学研究叢書第17巻、大学教育出版、2008年)。 「盛期ジャマイカ砂糖農園における奴隷の出生と死亡――『グッドホープのジョン』所有の6農園の事例――」(『社会経済史学』第80巻第1号、2014年、73‐89頁。) 「奴隷貿易・奴隷制度廃止の政治経済学――マルサスと西インド奴隷人口問題――」柳田芳伸・姫野順一編著『知的源泉としてのマルサス人口論――ヴィクトリア朝社会思想史の一断面――』(昭和堂、2019年)118‐143頁。)
「西インド諸島の奴隷人口に対するハリケーンの影響」井上孝・和田光平編著『自然災害と人口』(人口学ライブラリー第20巻、原書房、2021年、51‐73頁。)
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